2014.10.31飛騨高山ブラックブルズ岐阜 2シーズン目の挑戦
日本ハンドボールリーグが10月25日開幕した。飛騨高山ブラックブルズ岐阜は、熊本・山鹿市総合体育館で行われた開幕戦に12-29で敗れたものの、リーグ3連覇中の王者・オムロンを相手に粘り強い戦いを見せ、今シーズンに希望を抱かせた。
11月1日、2日に飛騨高山ビッグアリーナで行われるホーム戦を前に、山川由加監督と池之端弥生キャプテン、比嘉桃子選手に意気込みを伺った。
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残念ながら、日本でハンドボールはまだまだマイナースポーツだ。しかし、岐阜県の中学男子のハンドボール競技人口(中学の生徒数に対する競技比率)は全国第4位(データ出典:日本中学校体育連盟)、その中でも高山は特にハンドボールが盛んな地域だ。47年前の岐阜国体で高山が会場になったのをきっかけに、脈々とこの地に根付いてきた。
2012年のぎふ清流国体の競技会場が神岡、下呂と高山の飛騨地域に決まり、ブラックブルズの前身となる「HC高山」が設立されると、再び高山でハンドボールが盛り上がりを見せる。元日本代表の山川さんを監督に迎え、地元高山出身の選手を中心に強化を図り、国体では5位入賞を果たした。
国体終了後、「いいチームなのにこのまま解散してしまうのはもったいない。ハンドボールで岐阜を盛り上げたい」とチームが継続できるよう地元の方たちが尽力、日本リーグに参戦するクラブチーム「飛騨高山ブラックブルズ岐阜」が誕生した。2013年より日本リーグに参戦し、昨年は7チーム中6位でシーズンを終えた。
「もう負けたくない」
2シーズン目となる今年は、「プレイオフ圏内の4位が目標」と高山市出身の池之端キャプテンは話す。
6位から4位へ、数字上は2つ順位を上げるだけだが、上位4チームと下位チームの実力差はそれ以上にある。とりわけ企業チームとは競技環境の違いが大きく、その差を埋めるのは容易ではない。
プレイオフ進出という目標を選手が決めた時、山川監督は「正直コメントに困った」という。「長年指導者をやってきた経験から、はっきり言って今の状況でベスト4は無理。だけど、目標を掲げたからには、それに近づこうよ、達成しようよと。それに向けて自分たちがどれだけ挑戦できるかの方が大事。本気で挑戦するなら出来るかもしれない」と選手に目標に挑む姿勢を求めた。
「そのためには今変わらなければいけない。まだ1戦しか終えていない今、自分たちがトレーニングや気持ちを変えれば、目標を達成できる可能性はある。私自身2ヶ月後にどんなチームに生まれ変わっているのか予測が出来ない。だから指導者をやっているのは楽しい」と話す。
さらに「選手が『もう負けたくない』って言ったんです。それを聞いて、昨シーズン負けたことが本当に悔しかったんだなと思った。『勝ちたい』だと嘘くさいけど、(選手の気持ちは)本物だなと。人間味のあるその言葉が素敵だなと思ったんです」。
勝ち方より、負け方の方が大事
「(開幕の)オムロン戦は負けたけど、できたという感覚はある。結果的には12—29というスコアだったが、はじめて20点にのせられるオフェンスができたし、ディフェンスも24、25点で押さえられるという手応えがあった。対等に戦えた時間もあったから、本人たちの自信になる。立ち上がりからの16分くらいはほぼ対等だった。特に、退場者が出た時間帯を0-0でしのいだことは評価したい」と手応えを口にする。
「どういう勝ち方をするかもだけど、どんな負け方をするかが大事。去年は「あきらめる」とか次につながらない負け方ばかりだったが、今回のここが弱いなとか “分析して次につなげられる負け方“だった」そういうところも昨年からの大きな成長だ。
環境が悪いからこそ勝てるチームへ
そして迎える11月1日のホーム開幕戦。「対戦する広島メイプルレッズは攻撃のバリエーションが多く、少し苦手意識がある」と比嘉桃子選手。山川監督も「スタイルが似ているので、やりにくい部分はある。私自身(広島)は一番いいチームだと思っているし、優勝してもおかしくない」と相手を評価しながらも、「ホームの応援の後押しもあり、チームも去年より成長している。いい戦いができる」と分析する。
「特に応援の力は大きい。今までは例えば野球選手がホームランを打った時、ファンの皆さんの応援が力をくれたなどと言うのを見て、『そんなの嘘だ』と思っていたんです。でも昨年のホームゲームにたくさんの方が応援に来てくださって、選手が実力以上の力を出すのを見た。それからは応援の力というのを信じるようになりました」と笑う。
「私たちはクラブチームなので、仕事をしながらハンドボールをしていて決して恵まれた環境ではない。しかし、職場の人が『がんばれよ』って言ってくれたり、チケットを買ってくれたりして応援してくれることで、がんばらないといけないと選手が思う。それがプラスの力になる。クラブチームのおもしろさはそういうところです。
選手17人全員が支援してくれる人たちに対して本気で感謝してがんばろうと思えるようになった時、チームとして成長するのかなと思う。本当に”いい心”になった時、選手たちの力で勝てるようになるんだろうなと。私はそれを待っていたいなと思う」となでしこジャパンを例に挙げながら、「環境が悪いからこそ勝てるチームにしたい」と山川監督は力強く話す。
取材に訪れたオムロン戦翌日の練習は非常にピリピリとした雰囲気の中行われていた。選手自身が考え、お互いに要求しあう姿も見られた。ベスト4という“無理な”目標に向けて、選手たちの本気度が伺えた。
2ヶ月後、どんなチームになっているか、そしてどんな順位につけているか。アリーナに足を運び、選手たちの成長、本気のチャレンジを後押ししてほしい。
【スケジュール】
11月1日 13:00 vs広島メイプルレッズ (併催・男子 15:30 大崎電機 vs 大同特殊鋼)飛騨高山ビッグアリーナ
11月2日 13:00 vsソニーセミコンダクタ 飛騨高山ビッグアリーナ
11/23 16:00 vsオムロン ヒマラヤアリーナ