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2014.12.30世界選手権3連覇 柔道形 林聖治選手

オリンピックなどでおなじみの柔道だが、2人組で技の攻防の正確さ、流れの美しさを競う「形」をご存知の方は少ないかもしれない。

この柔道形競技の世界チャンピオンが岐阜県本巣市にいる。接骨院を営み、スポーツトレーナーとしても活躍する林聖治選手だ。大垣市在住の中山智史選手とのペアで世界選手権、日本選手権ともに現在3連覇中だ。
「完成がないところがおもしろい」と語る林選手に、柔道形の魅力についてうかがった。

 

林聖治

 (写真  左:中山智史選手 右:林聖治選手)

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形は文法、乱取は作文

 

柔道は日本生まれのスポーツだ。古くからある様々な流派の柔術を、1882年(明治15)に故・嘉納治五郎が「柔道」というスポーツして体系化した。1964年の東京五輪で正式種目となり、今では世界200カ国以上で親しまれるスポーツへと発展した。

柔道の修行では「形」と「乱取」は一体をなすものを考えられてきた。しかし、自由な「乱取」攻防を行なう柔道が世界的に広がっていく一方で、「形」は目立たない存在となっていった。そんな中、講道館と全日本柔道連盟が、修行の意味を認識し直し、「形」を普及させようと、1997年「第1回全日本柔道形競技大会」を開催。これきっかけに「形」の競技化が始まった。2009年10月には「世界柔道形選手権大会」の第1回大会がマルタ共和国で行なわれ、24カ国の選手が参加した。

 

柔道には7つの形がある。そのうち、「投の形(なげのかた)」「固の形(かためのかた)」「極の形(きめのかた)」「柔の形(じゅうのかた)」「講道館護身術(こうどうかんごしんじゅつ)」の5つが世界大会の種目となっている。
林さん、中山さんが行なっているのは「固の形」。寝技の形で、抑込技、絞技、関節技の代表的な技を各5本、計15種類を演じる。

林聖治

「形」競技は、技を掛ける「取(とり)」と技を受ける「受(うけ)」のペアで行なう。中山・林ペアは、中山さんが「取」、林さんが「受」の役割。ひとつの技に対して、まずは「取」の中山さんが技を仕掛け、「受」の林さんが3つの逃げ技を使って逃げる。逃げようとする林さんを中山さんがさらに制圧する。この3回の攻防で1つの技となり、それを決められた順番でこなしていく。

世界大会では、15種類の技に、礼法、全体の流れなどを加えた18項目を5人の審判が採点(10点満点の減点方式)。最高・最低点を除いた3人の合計点が得点となり、順位が決まる。

 

やるからには世界を獲る!

 

「形」競技を始めたきっかけは、ペアを組む中山さんからの誘いだった。4級の昇段試験に「固の形」が必要だった中山さんが林さんを誘い、4年前の2011年に練習を始めた。

「最初に接骨院の集まりで誘われた時には、『僕は絶対やらない』って言い張って、断ったんです。でも、翌日もう一回電話がかかってきて、(中山さんが)『俺はどうしてもやりたい』と言うので、そこまでやりたいならと始めました。その時に『やるからには、最終的には世界まで獲ろう!』と約束しました」

当初は昇段試験が目的だったが、その年(2011年)の全日本「形」競技大会でいきなり準優勝。翌年イタリア・ポルデノーネで行なわれた第4回世界形選手権大会に出場し、始めて1年あまりで優勝。その後、第5回京都大会、第6回スペイン・マラガ大会でも優勝し、3年連続世界一に輝いた。

 

完成がない。その奥深さが魅力

 

「完成がないのがおもしろい。世界大会を3回やって、やっと最近理解できてきたかなというくらい「形」は難しい。その奥深さが魅力です」と林さんは話す。

「攻撃と防御をいかに表現するかが点差になってくる。相手の力を受け流して相手を制圧するという「理合」をいかに一連の流れでできるかが、点数に結びつくところ。
基本が出来ていないと技が完成しないし、お互いの息が合わないと点数は伸びない。「理合」を理解していないと動きを考えだせない。決まっていることをやっているのだけど、その中には色々な要素が含まれる。様々なことを理解していないと表現が出来ないおもしろさが、3年間続けてきた今でもあります」

「理合」とは、武道において「理にかなった身体の動き」を意味する。単に技のかたちをなぞるだけではなく、動きに理合、つまり“リアリティ”があることが求められる。例えば、逃げようとする林さんを中山さんが制圧する時も、逃げる“形”ではなく本気で逃げ、その逃げる動きにあわせて真剣に押さえ込む。決められた技を行なってはいるが、動きは「乱取」と同じ真剣勝負でなければ、「理合」のある完成度の高い演技にはならないのだ。
「練習でも、演技は1日1回しかやりません。というより、1回しかできないんです。体力的にも、精神的にも」
7つの形の中でも、投と固の形は実際に「乱取」の競技に使える技。その分動きが大きく、疲労感も大きい。また、どちらかが集中力を欠いただけでも、ミスや動きのズレにつながってしまう。1回の演技は約12分だが、非常に高い集中力が求められる。

「どれだけ練習しても、本番のたった1回の演技がすべてという競技ですね。他の選手との比較というよりは、自分たちの思い描いているものが表現できるかどうか。何点だったというよりも、自分たちが満足する演技ができれば良いと思っています」
自分との戦い、道を究めるような側面を持ちながら、ペアの相手と合わせることも求められる。確かに複雑で、奥深い競技だ。

林聖治

 

来年は4連覇の期待がかかるが、競技を続けていくかは今のところ未定だという。
「7種目のうちの1つやっただけなので、1つずつ極めていけたらいいかなとは思っていますが、世界を狙うかどうかについては未定ですね。おそらくやると思いますけど。やりたいことがありすぎるんです」と林さんは笑いながら、静かな闘志を秘めた目でまっすぐ前を見つめた。

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林 聖治

岐阜県本巣市在住。
2004年三橋接骨院を開業。スポーツトレーナーとして国体柔道岐阜県代表選手団に帯同。日本体育協会認定アスレティックトレーナー。
2011年より柔道形競技を始め、2012、13、14年世界形選手権、全日本「形」競技大会で優勝

三橋接骨院:http://mitsuhashi.wpd.jp/index.html

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