2015.04.24悲願の1部昇格を目指す 大垣ミナモソフトボールクラブ
悔しさを糧に
「目標は全勝、ダントツで1部昇格することです」
春の長雨がにわかに止み、薄い日差しが差した大垣市の浅中公園ソフトボール場。ここを拠点に活動する女子ソフトボールのクラブチーム「大垣ミナモソフトボールクラブ」の選手たちは、リーグ戦開幕前の強化練習に挑んでいた。コーチのテンポの速いノックが選手を襲い、重いバットを振り込む。1時から始まった練習は休み時間もなく、瞬く間に5時間が経過。気がつくとあたりは薄暗くなっていた。
半年前、日本リーグ2部のグループリーグ(ホープセクション)を10勝2敗の首位で通過した大垣ミナモは、もう一方のグループ(アドバンスセクション)の勝者NECプラットフォームズと順位決勝戦を戦った。この試合に勝てば悲願の1部昇格。延長戦にもつれる死闘となったが、大垣ミナモは1点差で涙を飲んだ。
「遠く北九州まで駆けつけ、最後までずっと応援してくれた人たちがいたのに勝てなかった。情けなかったし、悔しかった。」口々に悔しい思いを吐露する選手たち。しかし意外にもチームを率いる伊藤良恵(かずえ)監督から出た言葉は違っていた。
「悔しかったけど、いい負けだったと今は思っている。勢いだけで勝ち上がって1部に昇格しても、またすぐに2部に落ちてしまうチームになっていたんじゃないかなと」
1部で戦えるチームづくりを
岐阜国体を機に立ち上がり、3年前から日本リーグの2部に参戦している大垣ミナモ。初年度はグループリーグ(ホープセクション)7チーム中4位、そして昨年はグループリーグ首位と一気に成績を伸ばした。しかしチーム全体として力がついた訳ではないと伊藤監督は考えていた。
「選手たちの力もそうだし、意識もそう。メンタルが弱かった」
昨シーズンまでの大垣ミナモは、元日本代表で3番を打ち、2度のオリンピックでメダルを勝ち取った伊藤選手兼任監督と、1部リーグから移籍してきたエース・山田麻美を中心としたチームだった。強力な投打の大黒柱に若手選手が頼ってしまい、あと一本が欲しいところで打てないシーンが何度もあったという。
(エース 山田麻美投手)
「私が選手でいるから、若手が頼ってしまい力を発揮しきれていない」と考えた伊藤監督は昨シーズン限りで選手を引退、若手に奮起を促した。
「1部に上がった時のためにも、若手の底上げをしておかないと、(1部では)勝つことが出来ない。2部から1部に昇格するために若手が必死でやってくれたら、1部でも十分戦えるチームになる」昇格が現実味を帯びた今だからこそ、伊藤監督はその先を見据えたチーム作りに取りかかりはじめている。
全員ソフトで
去年クリーンアップで3割以上の打率を残した伊藤監督の抜けた穴は大きい。「その穴を全員でカバー出来るチームであってほしい」と話す伊藤監督。中でも期待しているのはチーム一の長打力を誇る身長169センチの大型ショート新井賢紗(たかさ)と、去年グループリーグで5割3分3厘の打率を残し首位打者となった小泉あいの二人だ。
(ショート 新井賢紗選手)
新井は「みんなの信頼を背負えるような選手になりたい」とチームの中心として自覚を口にする。小泉あいは「とにかく自分の役割を果たすこと。1番打者なら出塁、2番なら送りバントや小技もできるように、ヒット数よりもどれだけチームに貢献できるかを意識したい」と今シーズンにかける思いを語った。
(昨年グループリーグの首位打者となった 小泉あい選手)
もう一つ、伊藤監督が心配するのは投手陣。昨年8勝したエースの山田は計算が立つが、それに続く投手に台頭してほしいと願っている。候補は、独特の伸びる変化球を持つ井本妃里(きり)と、昨年2勝の寺川亜美、そして高卒新人の裁(たち)ひかるだ。寺本は「山田さんの負担をいかに減らせるか、自分たちが白星を上げられるかがリーグ戦のカギになる」と意欲を見せる。
(左:寺川亜美投手/右:井本妃里投手)
1部昇格は通過点
「負ける気はしない。それだけの練習はしてきた。若い選手たちが公式戦でどれだけ伸びるか見てみたい」と伊藤監督は若手全員の成長に思いを寄せる。
目標を聞くと「開幕ダッシュ」「富山で2連勝すること」「応援してくれる人たちに『ミナモは強いし、逞しくなった』と言われたい」と次々と出てくるが、「1部昇格」という言葉はなかなか出てこなかった。大垣ミナモの1部昇格は伊藤監督にとって目標ではなく義務、もしくは通過点だと考えているからだろう。1部で戦えるチーム作りに自信をみせる大垣ミナモ。今年の秋、1部昇格の朗報に接する可能性は高そうだ。
日本女子ソフトボールリーグ2部 ホープセクションは明日4月25日に開幕。大垣ミナモは、25日(土)は花王コスメ小田原と、26日(日)は静甲と富山県岩瀬スポーツ公園ソフトボール広場で対戦する。
※写真は昨シーズンのものです