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2014.03.22バスケットSWOOPS 全国制覇とその後

3度の日本一、知られざる強豪チーム

 

岐阜県(市)にこの2年あまりで3度の日本一に輝いているバスケットボールのチームがあることをご存じだろうか。その名は「SWOOPS(スゥープス)」。9年前にバスケ好きが集まってスタートしたクラブチームだ。
2012年秋の「第1回全国クラブバスケ選抜大会」、2013年春の「第39回全国クラブバスケ選手権大会」、そして先日、3月20〜23日に行われた第40回の「選手権」で見事に優勝。並み居る強豪を打ち負かしての連覇はクラブバスケ史上15年ぶりの快挙だ。

SWOOPS第40回全国クラブバスケ選手権大会

 

発足当初のSWOOPSは休日に集まっては軽くゲームをしてバスケットを楽しむ単なるバスケ好きの集団だった。それを変えたのが現キャプテンの田中昌寛だ。大学を卒業し社会人となってもバスケを続けたかった田中は知人の紹介でSWOOPSに参加。やるからには全国大会で優勝したいとメンバーに意識改革を求めた。

SWOOPS第40回全国クラブバスケ選手権大会

そして、自らも率先して厳しい練習を行った。平日の夜には個人で体育館を借り、何十本ものダッシュや筋トレで体を作り、100本以上のシュート練習をこなした。仕事中も時間を見つけては腕立て伏せやスクワットをして体を鍛えた。さらには、自宅のリビングを奥さんに内緒で改装、ベンチプレスのセットを設置する徹底ぶりだ。

「小手先の練習では日本一が目標なんて言えないですから」。自らに妥協を許さない厳しい姿勢でバスケットに打ち込む田中に感化され、他のメンバーたちも覚醒、本気で日本一を狙うチームになっていく。
実力の劣る自分たちが勝つためには相手より走れるようになることが重要と、練習はボールを使わず体力強化のトレーニングだけで終わることもしばしば。あまりに猛烈な内容に、近所の人からは何をする集団なのかと怪しまれたこともあったそうだ。その甲斐あって現在岐阜県内では無敵。全国大会でも上位が常連のチームとなった。

 

練習に裏打ちされた実力

 

SWOOPSには現在19人のメンバーがいる。会社員や高校の教師、歯科医師など職業は様々。それぞれ仕事を持ちながら厳しい練習をこなし、試合に出場する。

全国大会を間近に控えたある日、練習を取材した。SWOOPの練習はほとんどにダッシュが入る。例えば、フリースローもダッシュ後の息が上がる中で行う。試合中は息が整った中でフリースローを打つことはほとんどないからだ。試合終盤でも正確なプレーが出来る体力をつけるためハードな基礎トレーニングを繰り返す。

本格的にボールを使った練習が登場するのは、1時間以上たってからだ。しかしそれも守備のポジション確認やリバウンドをいかに拾うかという比較的地味な練習が主だ。それでも選手たちは時折笑顔を見せながら2時間余りの練習をこなす。

SWOOPS第40回全国クラブバスケ選手権大会後日大会を見るとその練習の重要さがわかる。SWOOPSは何しろ守備が強い。前線の選手からしっかりと相手を追い込み、自由にシュートを打たせない。リバウンドも良いポジションをキープし、10センチ以上背の高い相手とも互角に渡り合う。
そして、何より凄いのはそれが試合の終盤でもずっと同じように出来ることだ。スタメンからメンバーチェンジをしても出てくる選手が同じようにプレーし、どの選手も体力が落ちない。体力強化のトレーニングがいかに選手たちの身になっているかがわかる。

実は、今大会には不安もあった。3回戦4回戦が行われた土曜日、センターのポジションを務める背の高い中心選手が仕事で来ることが出来なかったからだ。しかも同じセンターに入る選手もケガを抱えプレー出来ない状態だった。どうしても背の高い選手が有利となるバスケットボール。そんな中、4回戦では207センチの外国人選手を擁するチームと対戦することとなったのだ。

しかし、序盤こそ相手の高さのある攻撃に手を焼くものの、SWOOPSはスピードで圧倒した。守備でも前からプレスをかけることでミスを誘い、相手の体力も奪っていく。当初難しくなると覚悟していたゲームを、19点の大差をつけて快勝した。

 

バスケットでもプロチームを

 

最終日に行われた準決勝では秋の選抜大会で優勝した和歌山に、決勝では一昨年この春の選手権で日本一になった大阪のチームに勝ったSWOOPS。来年は当然3連覇を目指すことになる。

しかし、その道のりは厳しいと言わざるを得ない。SWOOPSも含め、今大会に出場するクラブチームのほとんどはどこからの援助もなく、自腹で練習場を借り、遠征に出かけ、用具を揃えなくてはならない。選手も1つ歳を取ることで仕事場での責任も増え、試合や練習に来ることができるかどうかわからない。もちろん家庭の問題もある。また若手の選手を獲得しようにも仕事先をどうするかなど多くの課題を抱えている。15年ぶりの快挙を成し遂げたチームですら、どこまで存続できるかは未知数なのだ。

SWOOPSの存続、そしてさらなる強化のため、梶本健治監督はジュニアチームを作り、恒常的なバスケット教室を開いていきたいと考えている。底辺の広いピラミッドを形成し、その頂点に立つのがプロ化したSWOOPS、というのが将来的な構想だ。
昨年日本一に輝いたこともあり、小中学生を教える「バスケットクリニック」は問い合わせ数は5倍になった。比較的競技人口の多いバスケット、人気漫画も数々あり、SWOOPSを応援してくれる人たちは潜在的に存在する。岐阜のバスケット、岐阜のスポーツを盛り上げるためにも、アマチュア最高峰の大会で連覇し、岐阜のバスケ少年や少女たちにとって目標となりえる価値を持った今こそ、SWOOPSプロ化の議論を始めるチャンスかもしれない。

SWOOPS第40回全国クラブバスケ選手権大会

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取材・文/STAR+編集部

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