2014.09.15大垣ミナモSC 1部昇格へあと1勝!
ネクストバッターズサークルでグラウンドに背を向け、両手で顔を覆う。一切の光を遮断し、精神を統一する。
「よし!」いつもの儀式を終え、小泉あいはゆっくりとバッターボックスに向かった。
2-3、1点リードされ迎えた6回裏。1死2塁から9番・大杉千尋のタイムリー2塁打で追いつき、なおもランナーセカンド。1本出れば逆転の場面で、小泉は不意にバットを寝かせた。
セーフティバント。
慌てたピッチャーが1塁に悪送球、その間にセカンドランナーが本塁を陥れた。大垣ミナモSCはこの試合初めてリードを奪った。
ファーストベースにスライディングし汚れたユニフォームをはらいながら、小泉は雲一つない青空に向かって右手を何度も突き上げた。
「(6回の打順は)7番からだったので、いいところで回ってくると思っていた。
自分の中では打ちたい気持ちもあったが、変な凡退をしたくなかった。
セイフティでヒットに出来る感覚があったので、狙いました。自分がセーフになれば必ず得点につながると思っていた。チームのために戦えたと思います」
勝ち越しエラーを誘った小泉は、笑顔でそう話した。
全員が自分の仕事をした結果、つかんだ勝利
勝てば文句なくホープセクション優勝が決まる大垣大会2日目の第2試合。対戦相手は前回5-1で勝利している大和電機工業。前日はクラブ北九州に、午前中に行われた第1試合は甲賀健康医療専門学校に快勝したことで、応援席には余裕が生まれはじめていた。
だが、試合開始直後、そんな球場の雰囲気が一変する。
必勝を期して先発したエース・山田麻未が、大和電機打線につかまったのだ。1回表、先頭打者、2番に連続ヒットを浴びると、ワイルドピッチで先制され、続く2回にも追加点を許す。
予想外の展開だった。今シーズン、先攻されたのは1節(4月27日)の対ドリーム戦と2節(5月16日)の東海理化戦のみ、2試合ともに敗れている。
「先制されることも、先頭打者を塁に出すこと自体があまりないことなので、リズムが悪くてハラハラした」(小泉)
打線が2巡目に入った4回に1点を返すが、5回裏にすぐさま1点を返される。重い空気が続く中、山田の女房役・柳田優香は冷静だった。「先頭バッターを毎回出した中で、最少失点に押さえることができていたので、前向きにとらえていた。3失点までに押さえれば、必ず逆転してくれると信じていた」
試合は柳田が予想した通りの展開になる。5回を終えて2-3で、1点のビハインド。
6回表からマウンドを託された寺川亜美が気迫のピッチングで無失点に抑えると、6回裏には前述のとおり小泉がタイムリーエラーを誘い逆転。そのまま4-3で逃げ切り、ホープセクション首位通過を決めた。
「今日の勝利は全員が自分の仕事をした結果」と柳田主将は安堵と自信の入り交じった表情で振り返った。
1部昇格まで、あと1勝
ホープセクション1位通過を決めた大垣ミナモは、10月に北九州行われる優勝決定戦でアドバンスセクション1位のNECアクセステクニカに勝てば1部昇格が決まる※。クラブチームの1部昇格は史上初のことだ。
※優勝決定戦で勝った場合は、1部に自動昇格。敗れた場合は、アドバンスセクション2位チームと2位決定戦を行う。そこで勝つと、1部リーグ11位のチームと入れ替え戦を戦う。
入れ替え戦は、先に2勝したチームが1部リーグ残留または昇格が決定する。1勝1敗で並んだ場合は2日目に2試合が行われる。
2部優勝をかけて戦うNECはアドバンスセクションを全勝で通過している。練習試合で対戦したことがあるが、勝敗は五分五分。
「(NECは)足を使ってかき回してくる印象がある。惑わされず、守備を確実に出来るよう練習したい。
大垣ミナモは、大垣市、岐阜県の皆様がサポートしてくれる中、1部で活躍したいという思いでやってきた。NECに勝ちます!」と伊藤良恵監督は1部昇格を力強く宣言した。
4節を終え首位打者が確定した小泉も「1部に昇格し、恩返しがしたい」と応援にかけつけた2000人以上の観客に勝利を誓った。