「ピンチを成長に」

 

前節の横浜FC戦、終了のホイッスルが鳴った瞬間、ガッツポーズとともにその場に座り込む選手が何人もいた。その光景は選手がいかに全力を出し切ったかを物語っていた。試合後の選手の表情からは、疲労だけでなく自信が見て取れた。勝利という結果とそこで得た自信を無駄にせず、さらにチームに勢いをつけるためにも、今節の栃木SC戦は何としても勝利をもぎ取りたい。

栃木SCは、3勝2分2敗で現在6位。前線からの積極的なプレスでボールを奪い、FWの瀬沼優司と大久保哲哉をターゲットに手数をかけずシンプルな攻撃を仕掛けてくる。清水から期限付き移籍中の瀬沼は7試合で5得点、得点ランキング2位タイと好調だ。

「やっと役者が揃ってきた。またけがをしないよう大事に使っていきたい」とヘニキが全体練習に戻った日の囲み取材でラモス監督はそう話したが、阿部正紀の退場というアクシデントで急遽そのベールを脱ぐこととなった。しかも、ボランチではなくCBでの起用となったが、木谷公亮とともに身体を張ったプレーで完封に貢献し、適応力の高さを示した。栃木戦もそのままヘニキが起用されることになりそうだが、横浜FC戦で長身のパクソンホを抑えた強いフィジカルで、瀬沼と大久保のツインタワーに自由を与えない守備を期待したい。

守備が堅く、失点が首位湘南に次いで2番目に少ない栃木だが、前節はホームで松本と対戦し、1-2で敗れている。前半1分、6分に立て続けにゴールを奪われたが、1点目は【4-1-4-1】の最終ラインと中盤の間に空いたスペースを使われ、松本の岩上祐三にミドルを決められている。栃木も当然修正をしてきているとは思うが、このワンボランチの脇のスペースは狙い所の一つだ。高地系治、太田圭輔、水野泰輔にはこの穴を上手く突いてほしい。

横浜戦のPKを獲得するまでの流れは、ここ数週間かけてバリエーションを増やしてきたコンビネーション練習の成果だ。
宮沢正史から中央にいた高地にボールが入ったのをスイッチに、太田が左サイドで、田中智大が中央で裏のスペースへ抜ける。高地が左サイドの太田に展開し、それを見てナザリトが猛然とゴール前に走り込む。中央に詰めてきていた水野がこぼれ球に反応したところをDFに倒されPKを獲得した。

「試合ではこのパターンは1回か2回しかない。しっかり決めよう」とラモス監督は何度も繰り返したが、横浜FC戦ではその1回のチャンスを確実に得点につなげ、勝利を手にすることが出来た。練習で積み上げていたことが、試合で生かされ、それが結果に結びつく。選手は手応えを感じたはずだ。

PKを決めたあと、ナザリトはゆっくりとラモス監督のもとへと向かった。ベンチ前で、監督、スタッフ、選手と喜びあう姿は、チームのまとまりを強く印象づけた。
これまで安定したプレーを続けてきた阿部の不在は大きいが、このピンチをチーム力アップの好機と前向きに捉え、チーム一丸となって、サポーターともにホームで2連勝を掴みたい。