STAR+ スタート | 岐阜のスポーツWEBマガジン PRE-OPEN!

STAR+ スタート | 岐阜のスポーツWEBマガジン

  1. HOME
  2. COLUMN
  3. STAR+LINE
  4. 【STAR+LINE vol.3】岩田卓也 「夢はいつか叶うと知った」(後編)
COLUMN

2014.09.03【STAR+LINE vol.3】岩田卓也 「夢はいつか叶うと知った」(後編)

STAR+LINE vol.3 岩田卓也

 ※前編はこちら

 

オークランド・シティは、既に今年12月にモロッコで開催されるクラブワールドカップ2014の出場を決めている。
「あと6ヶ月あるんですけど、過去2大会より今年の方が、今の段階でも気持ちが高ぶっています。『今年こそはやってやるぞ』って」
そう話す岩田は、3度目のクラブワールドカップ出場へ、そしてその先に何を見据えているのだろうか。

 ***

世界最高の舞台に立つ

 

初めて出場した一昨年。2012年12月6日横浜で行われたサンフレッチェ広島との開幕戦に、岩田は左サイドバックとしてフル出場を果たした。それは、ケアンズから始まった夢が叶った瞬間だった。

「夢心地って言うんですか。あんな凄い舞台に立っているのが、自分のことじゃないような感じでプレーをしていました。あの時は広島のミキッチ選手とかにボロクソにやられたけど、しかたがないかなって(笑)プロの、Jリーグチャンピオンの凄さを肌で体験することができ、よい経験になりました」

日本開催だったこともあり、メディアから注目を浴びたことも岩田に変化をもたらした。クラブワールドカップに出場してから、子どもたちから「サインして」とか「写真とって」と言われようになり、うれしかったと話す。
「プロの選手って、こんな風なんだな。いいなって。もっとがんばろうっていう気持ちにさせてもらえた」

ピッチの中でも外でも、クラブワールドカップに出場したことで、岩田の人生は大きく変化した。
「無名だった選手が海を渡り、世界最高の舞台に立つ」これだけでも十分なサクセスストーリーだが、この舞台を経験したことで、また新たな夢が広がりはじめた。

 

成長なく終わった2度目の挑戦

 

日本人初2大会連続出場をめざした昨年は、大会前に加入した2012年とは違い、OFCチャンピオンズリーグ(Oリーグ)の決勝で得点に絡むなど、自らの脚でクラブワールドカップの出場権を勝ち取った。

しかし、不運にも大会直前に怪我するアクシデントに見舞われる。チームはバルセロナで練習試合を行った後モロッコ入りしたが、岩田はバルセロナでチームドクターから走ることすら許されない状況だった。モロッコに入ってからやっと走りはじめ、直前でチーム練習に合流する。出られるか出られないかギリギリの状態。

「だから、試合に出られるってなった時、それだけで満足してしまった。モロッコ(ラジャ・カサブランカ)の右サイドハーフの選手が有名な選手だったらしく、また去年もボロクソにやられて。俺はいったい何をやっているんだろうって」

「大会でアピールしてプロに」という思いを秘め1年間過ごしてきただけに、悔しさとふがいなさがこみ上げた。
モロッコから戻った岩田は、食生活から見直し、よりサッカーに集中した生活を送るようになる。

「そしたらすごく調子が上がって、昨シーズン(2013-2014)はほぼ全試合に出場できました。今年は調子がいいなと、自信になったシーズンでした」

オークランド・シティは5月のOリーグ決勝で勝利。4年連続でのクラブワールドカップ出場権を獲得して、シーズンを終える。

 

「最初の夢」を叶えたい

 

そして迎えるニュージーランドでの3シーズン目。

「クラブワールドカップに2回出て、成長なく終わっているので、今回も出るだけで終わってしまったら、今までやってきた意味がない。今年こそは何らかの結果を残したいし、チームとしても初戦は絶対突破したいという思いがあります」

岩田が残したいと話した”結果”とは、ゴールやアシスト、初勝利など試合の結果だけではなく、「どこかのスカウトの目に止まる」ことだ。

「自分は動いてがんばるプレースタイル」という岩田は、現役を続けられるタイムリミットをあと数年だと分析している。だからこそ、今年の大会で「結果」を残すことの意味を誰よりも岩田自身が感じている。

「自分の一番初めの夢である、プロになるという夢を叶えて引退したいという思いはあります。最後はJリーグで1年でも半年でもプレーできたら。

もし取ってもらえるなら、一番は地元が良いと思う。あとは、そんなことでチームを選んじゃダメだと思うんですけど、三浦知良選手が昔からのあこがれだから、カズさんとプレーしたいという思いもあります(笑)」
と冗談まじりに話しながらも、そのまなざしはまっすぐ前を見据える。

オークランド・シティのシーズンはまだ始まらないが、既に岩田はニュージーランドに戻った。下部組織のセントラル・ユナイテッドの練習に参加し、最高の状態でシーズンを迎えるため調整を続けている。

「今シーズンの目標は常にレギュラーで出続けること。でもそれだけではなく、もっと上手くなってから引退したいので、試合に出て満足するんじゃなくて、さらに上に行けるように、もっと必死になっていろんなことに取り組みたい」

 

夢はいつか叶うと知った

 

インタビューの最後に「これまでの人生を一言で表すと?」と少し難しい質問をしてみた。岩田はしばらく考えてから、力強くこう答えた。「夢はいつか叶うと知った」

「29歳で夢にすら見なかったことが実現した。若くして諦めちゃう選手も多いと思うんですけど、なんだかんだでサッカー続けてきてよかったなって思う。がんばってやっていればどんな形か分からないけど、目標にして来たものに近づけたり、叶うんじゃないかなって思います」

もしクラブワールドカップに出られていなかったとしても、オーストラリアやニュージーランドに友だちが出来たし、海外生活で得た全てが貴重な体験だ。英語はもちろん、指導者やチームマネジメントの勉強をしながら、選手生活を送ることができていることに充実感を感じていると話す。

 

「夢は叶う」と知っている人間は強い。迷いなく夢に向かって努力できるから。それは何よりも大きな、夢を叶える原動力となる。

岩田卓也のミラクルストーリー、その2014年のページにはどんな物語が書かれるのだろうか。
『クラブワールドカップでの活躍が認められ、Jリーガーになる』
そんな奇跡のような夢も、いつかきっと叶うだろう。

FIFAクラブワールドカップモロッコ2014は、12月10日に開幕する。

 

 

岩田卓也オフィシャルサイト:http://takuyaiwata.com
取材協力:フットボールクラブ「ラセルバ」

【STAR+LINE vol.3】岩田卓也 「夢はいつか叶うと知った」(前編)

  • チェック

取材・文/STAR+編集部

ページのトップへ戻る